君に慣れにし・・・(参)




己の想いから逃れる様に、宮も目を閉じ、共に眠りに付こうとした。

「ん・・・」

闇の中、微かな、声とも吐息ともつかぬ声が閨に響く。
その微かな声と共に僅かに博雅が身動ぐ。
その僅かな変化に、宮がふと目を覚ました。

「博雅・・・?」

また良くない夢を見ているのか、とその肩に手を掛けようとした時、また博雅が身動ぐ。
更にうっすらと開かれた唇から吐息が漏れた。
「あ・・・」
それは、普段の博雅からは想像も付かない程、甘やかな吐息。

そして、身動ぎがいよいよ大きくなり、その度に夜着が乱れる。
共に掛けた寝具の衾から覗いて見える首筋や肩が露になり、その白さと細さに目を奪われる。
「どのような夢なのだ、博雅・・・?」
その内にも博雅の息は次第に上がり、漏れ聴こえる喘ぎの様な吐息も甘さと熱を孕んでいく。

「ん・・・は、あ・・あ・・・」

その様に宮は瞠目する。
これが、あの稚い博雅の唇から漏れ出るとは。
まるで、閨で女が悦びのあまり漏らす、あの聲の様な・・・
と、博雅の腕が宮に絡みつき、その身を摺り寄せてくる。
その間にも博雅の聲はいよいよ高さと甘さを増し、体も密着させて・・・

(誰ぞに抱かれているのか?博雅・・・)
「あん、あっ、あ・・あ・・・宮、さま、あ・・・」
(宮さま・・?私の事か?夢の中で私に抱かれているのか?博雅・・・)
恐る恐る手を伸ばし、その体にそっと触れる。肌がしっとりと汗ばみ、上気して色香さえ感じる。
その肌に手を這わすと、博雅の聲は更に甘さを増し、より身を擦り付けて身動ぐ。まるで現にも抱かれているような・・・
博雅が動きを増す度、夜着はすっかり乱れ、最早腕と腰に絡みつくだけ、という有様になっていた。
腰にぬるりとしたものが当たる。
見ると、未だ幼い博雅の下肢の中心が、僅かに頭を擡げて透明な蜜を吹き零していた。

漸く訪れた、博雅の性への目覚め。
それがこの夢を見せたのだと宮は得心した。
思わず、その愛らしい分身に指を絡め、緩く扱いてやる。

「ああん!」
博雅が身を反らす。
夢と現で齎される愛撫に、只、博雅は溺れ、身悶える。
宮も、何時しか夢中で博雅のそれを弄んでいた。
そして、自分がこの養い子に欲情している、と気付いた。
現でもこの躯を嬲り、思う様、乱れさせてみたい、と・・・その想いが更に手の動きを激しくさせる。
「あんっ!あ、はああっっ!ああっ・・・」
博雅が更に喘ぎ、宮の手に己を擦り付ける様に身悶える。
宮の指がその先端を強く挫いた。
「ああ!あ、あーーっっ・・・」
絶叫と共に博雅の背が撓り、宮の手にその白濁した欲液を思う様、吐き出した。
幾分痙攣した後、宮の胸に凭れかかる。
宮はそのまま優しく抱き締めていてやると、暫くして博雅の瞼がゆるゆると開き、夢から覚醒し始めた。

暫くはぼんやりと、未だ夢現を彷徨っている様な表情だったが、次第に目が覚め、目前の宮の姿を漸く認めた。
「あ、宮様・・・?なぜ・・あ、・・・」
そこで漸く状況に気付く。

己の躯は夜着が乱れ、汗ばみ、しかも下肢に濡れた感触を感じる。
更に、その姿で宮に抱き込まれていた。
「あっ!み、宮様・・申し訳ありませぬ!ご無礼を・・・」
だが、その言葉は半ばで遮られた。
宮の唇が博雅の唇を柔らかく塞いでいた。
「んん・・・」
博雅の瞳が見開かれ、その間にも驚きに薄く開かれた唇からも宮の舌がするりと忍び込み、その柔らかな舌と口腔を思う様蹂躙する。
漸く解放された頃にはすっかり博雅の息は上がっていた。
「宮様・・・?」
「博雅、そなたがこの夢を見る訳が解った。そなたの躯に春が芽生えておるのだ。春は全ての目覚め。そなたの躯が目覚めた証なのだ。」
そのまま柔らかく抱き締められ、博雅はその瞳から涙を一筋、つう・・・、と零した。

「宮様・・・私は、何故あの様な夢を見るのか、解りませんでした。その夢に宮様を見る事も、ただ己が浅ましく思えて・・・何より、この事を告げられなかったのは、この博雅を汚らわしいと思われ、宮様に嫌われてしまう事を恐れたから・・・
宮様、お慕いしております・・・お慕いしているから、夢に宮様を見るのです・・・」

今になって気付いた。
全ては、己の宮に対する想い。
道ならぬものだと、汚れたものだと言われ様と、もう誤魔化す事は出来なくなっていた。

「博雅、顔をお上げ」

言われて、おずおずと顔を上げると、額に宮が優しく口付けを落とした。
「私はそなたを嫌いになどならぬ。何故なら、この私も同じだからだ。そなたが夢を見て乱れるのを目にして・・・私もそなたに触れたい、と思った。
そして、そなたを案ずるのも、そなたを想う故に。そなたを愛しく想う故なのだ・・・」
「宮様・・・」
博雅の瞳から新たに涙が零れる。
それを宮の唇が優しく吸い取り、再びその唇に口付けた。
博雅も宮の首に腕を絡め、それに応える。
激しく互いの唇を貪り合う間にも宮の手が肌を弄り、指を這わす。
口付けを解いても宮の唇は博雅の首筋を這い、下に降り、その肩口、胸に口付けを落としていく。
「あ・・・」
博雅から濡れた吐息が漏れる。
胸の中央、淡く色付く蕾に宮の唇が触れ、舌を這わす。
「ああ・・・」
博雅の背にぞくり、と何かが走る。

この感覚は、この甘い痛みは何だろう。
それでも、未知の感覚をこの人に因って暴かれる。その事に悦びを覚えてもいた。
尚も宮が舌を乳首の周りに這わせたり、きつく吸い上げたりする度に絶えず博雅が甘い聲を漏らす。
宮は胸を唇で愛撫しながらも、その手を博雅の下肢に伸ばし、その中心で震えるものにそっ、と触れた。
「あ・・・」
博雅がびく、と身を震わす。
その聲に気を良くした宮の指が更にその愛らしいものに絡まり、緩く上下に扱く。
「あ、宮、さま、は・・あ・・・」
宮の巧みな手淫に博雅はただ、熱い吐息を漏らし、甘い聲を漏らす。
宮の唇はまだ博雅の胸にあり、その紅く色付いた蕾を嬲り、歯を立てる。
「あんっ・・」
博雅が小さく喘いだ。
慣れぬ感覚に身を震わせ、それでも応えようとする様が、宮にはこの上なく愛らしく思える。
「愛いのう。まこと、愛らしい方だ・・」
いよいよ宮は手の動きを激しいものにし、より悦楽を博雅から引き出そうとする。
「あ、はあ・・あ、ああっ・・・」
博雅の聲が更に高く、余裕の無いものに変わり、手の動きに合わせる様に腰をも揺らめかす。

宮もまた、自らの腕の中で、自分の齎す愛撫に素直に乱れる博雅の姿に、些か余裕を無くしていた。
早くこの躯に己を深く刻み付けたい。どれ程の愉悦を齎すのだろう。



/続