旅先にて
高校最後の夏休み。流川が「二人っきりで旅行してー」とのたまった。
まあ、確かに、自分達は高校の最高学年を迎え、夏休みの前には部活を引退した身分で、そうなると、何となく気が抜け、自主練をしてみても張り合いが無い。
そんな時に、流川が親から旅館の宿泊券を貰った。TVで応募して当てたらしい。
本当は、母は父と行くつもりだったらしいが、生憎、都合で行けなくなったので息子に譲ったのだ。
ペアだから誰かと行ってきたら。と母親から渡された券を手に、これは好機だ、と流川は密かに拳を握った。
翌日、早速花道に話を持ち掛けた。
一応、自分達は所謂「お付き合い」をしている、流川曰く「恋人同士」のカンケイ、ではある。
これまでにも、ハードな練習の合間を縫って、世間一般の恋人が踏襲するステップを一応、踏んできたつもりだ。
勿論、する事もしている。だが、二人で遠出、なんて事は殆ど無かった。
部活から開放された今なら、まあ、恋人らしくするのもいいだろう。
花道は照れながらも了承してくれた。
そして、待ちに待った旅行当日。
流川は感心にも待ち合わせの時間ぴったりに到着して花道を驚かせた。(いつも寝坊で遅れるのが常だった。)
この日の為に両親に頼んでおいたのだ。
そして、二人は電車で一路、長野へと向かう。
観光地として有名な温泉街の一角に、目指す旅館はあった。
中庭には緑が溢れ、客室も離れが幾つか点在する、しっとりと落ち着いた佇まいの旅館だった。
普通なら、自分達みたいな学生の身分が泊まれる様な処ではない、と花道は幾分気圧されたが、出迎えた
女将と仲居の、親切で柔らかい物腰に、些か気分も落ち着き、案内された部屋にはしゃいでみせた。
「おお、離れになってんだな。見ろよルカワ、中に露天風呂があんぞ!」
一頻り中を見て回り、庭に突き出した東阿風の露天風呂を見付けて、花道は至極機嫌が良かった。
離れは母屋から独立した造りになっていて、夕食の時間に仲居が部屋に食事を運ぶ他は、呼ぶまで誰も近寄らない。
つまり、その間はナニしててもイイ…流川の目がきらりと光った。
「んじゃ、メシまでまだ時間あるし、フロ入るか。…二人で。」
流川が花道の手を取って、にやり、と笑う。
「…一緒じゃなきゃダメ…?」
「ダメ。」
「オ、オレは一人の方がっっ」
「どあほう、二人で入った方が気持ちイイ。メシが来るまでに終わらせてやっから。」
何をだ…と花道は叫びたかった。
ぴちゃ、ぱしゃ、としきりに浴室から水音が響き、それが周りの緑に溶け込んでゆく。
庭に突き出した東阿風の露天風呂の中、流川は花道を背後から抱き抱えて湯に浸かっていた。
ただし、その大きくしなやかな手は花道の肌をしきりに弄り、その股間の中心で猛ったものは花道の熱く柔らかい内に呑み込まれている。
流川が少し腰を揺らすと、花道の塗れた唇から甘ったるい聲が漏れた。
「あ、…んっ、んんっっ」
「ココがイイのか?」
流川が探り当てたポイントを突く。
「や、んっっ」
「んなに気持ちイーか。」
「ん、んんっっ…」
「言ってみろ、どあほう。気持ちイイって、もっと突いてくれって…」
流川が花道の耳たぶをねっとりと舐め上げ、胸元に廻した手でその先端をくり、と抓る。
「あんっっ」
「オメーはココも弱ぇな。」
流川の両手が胸に廻され、両の指先が花道の胸の果実を悪戯する。
片手で捏ね回し、もう片方で指の腹で軽く掠めたり、かと思うと、きり、と爪を立ててみたりする、
「あ、んん、や、っっ」
その度に花道の躯が跳ね、甘ったるい喘ぎが開かれたままの唇から漏れる。
「そうだ、もっと声出せ。もっとイイって言ってみろ。もっと気持ちよくなれっから…」
流川が花道の乳首をきゅ、と抓むと、花道が更に甘く啼いて躯を捩らす。
その際、流川を包み込む内壁もきゅう、と内で蠢くものを締め上げた。
「ホラ、イイんだろ?ココ、締まった…」
流川が片手を後ろに忍ばせ、繋がった箇所をなぞると、花道の躯がぶるりと震えた。
「イイっつってみろよ、ホラ…」
流川を呑み込んだ肉の周囲を指でぐるりとなぞり、胸の果実を更に責め立てると、花道の肉厚の唇から
吐息の様な声が漏れる。
「あ、イイ、ルカワっっ…」
「よく言った。」
流川は会心の笑みを浮かべると、花道の脚を掴んでその躯を揺さぶりだした。
肉棒が花道の内を出入りする度、結合の箇所からお湯が入り込み、花道はその感触にも絶えず、喘ぎを漏らす。
「や!ルカワ、あ、つい…湯が、入るっっ…」
「そんでも感じる?すっげえ滑って動きやすい…」
流川が花道の耳元に唇を寄せ、囁きながら舌で耳の中をなぞり、その手は花道の腰に添えられ、一気に
動きを激しいものに変えていった。
「やあ!あ、あ、ああ、んああ…」
「さくらぎ」
既に流川自身も余裕は無い。
いや、最初から余裕なんて、何時だってありはしない。
この、腕の中に抱いている鮮やかな存在に触れた時から既に。
流川の手が花道の前を捉え、腰の動きと共に合わせる様に手を動かしていく。
「や!あ、あ、ルカ、ルカワぁっっ!!お、かしくなるぅっっ」
「オカシクなれよ。壊れちまえ…」
流川が花道の腰を両手で掴み、軽く持ち上げ、そのまま下ろし、その時に自分も腰を使って突き上げた。
「ああっっ、あーーっっ、あ……」
奥深く刺さった衝撃に堪えきれず、花道は高く叫んで絶頂を迎えた。
その際に、流川を銜え込んだ肉がこれまでになく強く内のものを締め付け、流川も堪らず低く呻いて花道の内に熱い精を迸らせる。
湯が、二人の若い精で白く濁った。
あまりの衝撃に、二人共暫く体を動かせず、息を整えるのがやっとだった。
何度か荒く息を吐き、漸く呼吸も整った花道はくたり、と流川に体を預ける。
「…ったく、イキナリ飛ばしてんなよ…」
「テメーもノリノリだった。すげー良かった。」
「恥ずかしいヤツ。このエロギツネ。」
「そーオメー限定でエロエロ。そろそろメシ来っかもしんねーから先上がってる。オメーはゆっくりしてろ。」
「うげ、もうそんな時間…?ど、どんだけヤッ…」
そこで先程迄の情交を思い出して言葉に詰まった。
既に花道は真っ赤だ。
そこではた、と気付いた。
「そ、そー言えばテメー、ゴム着けてなかったよな!中出ししやがって…どーすんだよ!フロん中、アレが混ざっちまっただろ!!」
「源泉掛け流し、らしーから大丈夫。」
「へ?」
「パンフに書いてあった。オレらのはとっくに流れちまってる。」
言われて浴槽を見遣ると、自分達が放ったもので白く濁った筈のお湯は、何時の間にか再び元の透明さを取り戻していた。
浴槽にはちょっとした岩の滝に見立てた注ぎ口があり、其処から絶えずお湯が流れ続けているのだ。
「そ、そーか。よかったあ…」
あからさまにホッとする花道に、流川が留めとばかりに耳元に囁く。
「だから、何回ヤッてもヘーキ。メシ食ったらもう一回入んねえ?」
「…ざっけんな!!もうこん中でなんてゴメンだ!!」
「じゃー布団で。今度はじっくり愛してやっから覚悟しとけよどあほう。」
にたり、と笑みを浮かべる流川の顔をまともに見てしまった花道は、蒼白になりながら、明日の予定を思いやって天を仰いだ…