
ある土曜日の練習後。
この日、三井と宮城、それに花道と流川が揃ってカラオケに行く事になった。
何かあるとこの四人でつるむ事が多いのは、先輩ズがこの後輩二人ならネタにしやすい、と踏んでの事だろう。
実は花道は内心怯えていたのだが(流川くんの恋唄参照)。
四人揃って座り、花道の隣には当然の様に流川が陣取る。
まずは取り敢えず宮城、三井、花道の順に歌い(先に入れた順)、実は内心密かに三井と宮城がメインとして期待していた流川の番となった。
流川がすく、とマイクを手に立ち上がり、隣で花道がビク、と体を震わす。
本当は此処から逃げたい。が、先輩二人に「奢るから」と言含められてしぶしぶ付いてきたのだ。
さて、流川がセレクトしたのは・・・・
「ま〜た懐かしのアニソンかあ?」
「そんでまたオンナノコがメインのヒーロー物?セリフあったらソレも歌えよ〜」
三井と宮城が他人事だと余裕ぶっこいていられたのもそこまでだった。
流れるイントロと画面に三人揃って顔色を失くす。
「この頃流行りの女の子〜お尻の小さい女の子〜」
「・・・・・え、コレ、コレって・・・・」
「言うんじゃねえ宮城!」
「キュー



「馬鹿!桜木!!」
墓穴掘りやがって・・・とでも言いたげな先輩二人の視線にも最早花道は応える事が出来なかった。
どうして流川がこんなん知ってんのかとかもしかして視てたのかとかそんなん最早どうだってよかった。
前回と同じくこの歌は明確に自分に向けられている。
だってやっぱり流川の目が自分にターゲットロックオンしたまんま動かない。
やたら熱の篭りまくったねっとりした視線で。
そして三人のこの場限定地獄はまだ続く。
「こっちを向いてよ


流川の、女の子なら失神しそうな低い、良い声(でも喋りはボソボソ)が殆ど抑揚を付けずに美少女アニメのオープニングを歌う様はなんだか彼の背後にどす黒いんだか蛍光ピンクが混じってんだか訳の分からない不可思議(でも不気味)な色のオーラが立ち上っていてもう何がなんだか分からない。
(お、お願い近寄らないで〜〜

やっぱり花道に限界が来た。
物も言わずにすっくと立ち上がると、やはり脱兎の如く逃げ出したのだ。
「どあほう!!」
やっぱり流川も熱傷していた筈のマイクを放り捨て、花道の後を追って部屋を飛び出した。
「またかあのクソガキ共!!!」
「つうか三井さんも懲りないですねえ・・・・」
憤慨する三井を湘北きってのスーパーガードは斜め目線で見遣った。
「もうやだ・・・オレ、なんでこんなのに掴まっちまったんだろう・・・」
「どあほう、泣くんじゃねー。一晩中慰めてやっから。あの歌のオンナはオメーだ。赤毛のダイナマイトバディなんてオメーそのものじゃねーか。オメーの方がずっとずっと可愛くてスペシャルバディだけど」
えぐえぐ泣き続ける花道を流川はそれは嬉しそうにだらしなく鼻の下まで伸ばしながら優しく抱き締め、今宵はどう慰めようかと夜のひと時に思い(妄想)を馳せていた・・・・・