白くて綺麗で凛として。

自慢の恋人。

それでも何故か不安を抱えてる。











純白の想い人











しんと静まった大晦日。
聞こえるのは除夜の鐘。
目の前に見えるのはしんしんと降り行く雪。
庭の針葉樹の緑は純白に染まる。

「ふふっ」

博雅は庭を見ているかと思うと、いきなり笑い出した。
晴明はくすくす笑っている博雅を怪訝に思った表情で博雅を見る。

「どうしたんだ。」

晴明が尋ねると博雅は庭から少し視線を晴明に移した。
表情は笑ったままで庭を指差す。

「雪の色は晴明の色と思ってな。」

「どういう事だ?」

晴明は不思議そうに博雅に尋ねる。
しかし何処か楽しそうに尋ねているようにも見える。

「静かで真っ白で、晴明の色だ。」

博雅は嬉しそうに言いながら断固確信を持って晴明に微笑む。
その表情は子供が秘密基地を見つけた様なそんな感じだった。

「俺は、そんな漢ではないぞ。」

「晴明は本当に雪の色だよ。本当に…。」

否定する晴明に熱弁する博雅。
その中に何か、切なげな声がする。
晴明はそれに気付かない筈が無い。

「博雅。」

晴明の紡ぐ声に博雅は、ん?と首を傾げる。
そんな博雅の頬に手のひらを当てる。

「…。」

「何を考えている?」

「何も。」

「嘘。お前の表情ぐらい読めるつもりだが。」

晴明のその言葉に博雅の表情が曇る。
寂しそうな儚い瞳。

「晴明は、本当に雪の子みたいだから。だから…」

辛そうに自分の衣を握る。

「だから…いつか溶けてしまいそうで。雪のように晴明は消えてしまいそうで。」

噤まれた唇から必死に出た声。
言うと本当になってしまうんじゃないかという不安が博雅をずっと支配しているのだ。
そんな時、ふわりと圧力が博雅にかかった。

「ほんとうにお前はいい漢だ。」

博雅は晴明に抱きしめられていた。

「晴明…。」

「消えぬよ。お前が俺を必要としなくなるまで、な。」

抱きしめる力が無意識に強くなる。
博雅はその強さに本物の意識を感じとり背中に腕を回した。
そして博雅も晴明を強く抱きしめた。

「信じるぞ?」

「あぁ。こんな事を言うのは今年で終わりにしてくれ。」

「ん。多分な。」

「…お前にはかなわないな。俺は。」

「そうか?」

「あぁ。」

どちらからとも無く唇が重なる。
深く切なく漏れる吐息が二人だけの世界に溶け込む合図。

そして二人は新しい年が始まった瞬間を見逃した。



「love drug」の神楽サヤ様からフリー小説を頂きました。
この雰囲気がたまりません。