光の下の幻想




「あ…ああ…」

初夏の昼下がり。
明るい太陽の光の下で、擦れたような博雅の聲が辺りに響く。
躯を捩ると、ぎり、と両手首の紐がきしる。博雅の、衣をはだけた胸元には晴明の頭があった。
胸の突起を舐められ、もう片方は指で摘まれたり爪を立てられたりしている。
躯が動かない。
両手首を戒められている為だった。
戒めた紐の先は柱に括り付けられている。
博雅は下着を身に付けているだけだった。

「嫌だ…はな、せ…」

擦れて途切れがちの声で、それでも抵抗を示す。

「放してもよいのか?ほれ、もうこんなだぞ?」

薄く微笑って博雅の下肢に手を伸ばす。途端、びくんと躯が揺れた。
それを気にも止めず、中心へと指を絡め、悪戯に引っ掻いてみたりする。

「や…っ!」
「ふふ、可愛いな博雅は…もう雫を垂らしているではないか。」

言葉でなぶり、指で柔々と揉みしだいていく。

「やああ…あっ、ああっ…」

除々に頭の中が白くなり、まともに思考を紡げなくなって行く。
ただ、与えられる感覚を追って行くだけになる…
聴きたくないのに…
喘ぐような嬌声を上げているのは誰だ…
晴明の指がもたらす快感に悦んで腰を揺らしているのは…?
知りたくなかった。

こんな、雌の様に浅ましい自分など。
それを否応無しに目の前に突き付けたこの男を…

「恨むぞ、晴明…」

涙がとめどなく溢れてきて、自分を見る男の顔がぼやけて見えない。
友だった筈のこの男が憎いのか…或いは。
愛しいのか…
博雅には分からなかった。

「あ、ああっっ!」

突然、博雅が聲を高くした。
晴明が、中心を口に含んでいた。

「お前は、おれとこうして楽しんでいればよいのだ…」

筋に沿って根元から舐め上げながら、酷薄な響きで晴明が呟く。

「いや…あ、ああっ…」

いっそ夢ならよかったのに。
夢なら、いつか目が醒める。
あれは悪い夢だったのだと…
そう思う事ができるのに。
だが現実は。
光が降り注ぐ初夏の眩しい日差しの下。
躯の自由を奪われ、衣を剥がれ、友と信じていた男に犯され…翻弄されている。
夢のような現実。
ならこれは幻想だ。
明るい陽射しの下、博雅の聲が響き、その躯は余す所なく曝され、晴明の手と舌に依って変貌を遂げていく。