桜 の下
流川と花道が湘北高校に入学して二度目の春。
この日も既に陽が落ちた薄暮に、今を盛りと咲き誇る桜の花が、傍にある体育館を覆う様に、その花弁をひらひらと舞う様に散らせていた。
二人は正規の部活が終わった後に恒例の如く、居残り練習に励んでいたがそれも切り上げ、体育用具室にボールを
戻しに入った。 ⒈
中は薄暗く、唯一、天井近くに窓があり、それが半分程開いて、昇ったばかりの月がまだ淡い光を、傍らの桜の樹に降り注いでいた。
月光に照らされ、ぼんやりと浮かび上がって見える、花をたわわに咲かせた桜が、はらはらと僅かに花弁を散らせているのが見えた。
花道がボールの籠を隅に置くと、不意に流川がその背をとん、と軽く押す。
思わず手を付いた先は、積み上げられたマットの上。
振り向くと、すぐ後ろに流川が立っていた。
窓から僅かに差し込む月明かりを背にした彼の相貌はよく見えない筈なのに、何故かその黒い双眸が、黒い宝石の様に光っている。花道にはそう思えた。
不意に流川の意図を察して、マットの上に座って彼を見上げる。
こうなる事を予期しなかった訳ではない。
彼もまた、密かに望んでいた事なのだから。
「ん…ん、あ…」
何処か押し殺した様な、呻き声とも取れる微かな声が用具室に響く。
マットの上に寝転んだ花道の上に覆い被さった流川が、その引き締まった肢体を撫で、胸に舌を這わす。
尖らせた舌先で桜色の乳輪をぐるりとなぞり、ひくりと震える可愛らしい乳首をちゅうっと吸い上げる。
「あんっ…」
花道が切なげな吐息を漏らし、流川の頭を押し付ける様に掻き抱く。
その様に流川は薄く微笑む。
この躯をここまでにした。何度もこの熱い躯に触れた。
漸く手に入れた愛しい体をじっくり味わおうと、更なる愛撫をその躯に施していく。
胸に舌を這わせながらも空いた片手で下肢を弄り、ハーフパンツの中に手を突っ込むと、びく、と下の体が揺れた。
下着越しに触れたものは既に反応を示しており、じわり、と濡れている様をも伝わる。
「…もう濡れてる。」
「……っっ!」
わざと耳元で囁いてやると、途端に花道の顔がかっと紅く染まり、羞恥にぷい、と顔を背けてしまう。
「恥ずかしがるコトねー。オレに触られて感じてんだからオレは嬉しー。もっと感じさせてえって気んなる。」
「…こんのクソバカエロギツネ……」
「そのエロギツネが好きなんだろ?」
言うなり、流川は花道の下着の中に手を突っ込み、中のモノに直に触れた。
くちゅ、と濡れた音がする。
「…ヌルヌル。」
「…っっ!!」
更に花道の躯が朱に染まり、流川から躯を離そうともがいてみるが、流川はそれを押さえ込み、唇に朽ち付けを
落とす。
「んん…っっ」
深く舌を絡めると、合わせた唇から甘い吐息が微かに漏れる。
流川は花道の甘い口腔を存分に堪能しながら、下肢にも手を添え、下着を引き摺り下ろした。
露わにされた花道の陰茎に触れ、ゆっくりと棹を扱き上げる。
その刺激に、組み敷いた躯がびくり、と揺れた。
流川がその手を上下に動かす都度、にちゅにちゅと粘ついた音が絶えず響き、先端から垂れる蜜で更に滑り、自然と動きが早くなっていく。
「んっ…んんっっ、…」
流川に口腔を貪られている花道は、途切れがちに苦しそうな、けれど何処か甘さを孕んだ呻き声をしきりに漏らす。
いつしか、流川の手の動きに合わせてか腰が自然と揺らめいていた。
「気持ちいーか。」
「…バッカ…」
「いっぺんイカす。そのほーが後で楽だろ?」
流川の台詞に花道の顔が更に紅く染まった。
一度絶頂を迎えた後は、体中が弛緩し、下肢の奥の蕾までも柔らかくなり、流川を受け入れやすくなるのだ。
口付けを解いた流川の顔がそのまま下に下がり、下肢の狭間で震える花道のものをちろ、と舐めた。
「あ…」
花道の下肢が揺れる。それは期待なのか不安からなのか、自分にも分からない。
不安とは…一度、悦楽に飲み込まれたら、自分が自分でなくなる様な…そんな気がするからだろうか。
流川の舌が手で持ち上げた陰茎の、根元から裏筋をつうっとなぞり、先端の穴に捻じ込む様に舌先をぐりぐりと
突き入れる。
「あ、あっ、や、ああ…」
それだけで花道は絶えず甘く切なげな聲を漏らし続け、更なる蜜が、口淫を受けているそそり立ったものから、
しとどに溢れ出す。
更に流川の指が、その下で揺れる陰嚢にも伸び、それを転がす様に玩ぶ。
じゅぷ、じゅ、と花道の下肢から濡れた音が淫らに響き、その音にも煽られて花道は最早限界が近い。
「や、ルカ、も…イク……」
「イッていー…」
流川は更に先端をきつく吸い上げ、双珠をきつく揉みしだいた。
「やあ!あっあああーーっっ……」
堪え切れず、花道は思い切り背を撓らせ、全身を震わせて絶頂を迎える。
流川の口内に、若い精が迸る様に叩き付けられた。
それを余す事なく飲み干し、更に、未だびくびくと震える棹に舌を這わせ、残滓を舐め取る。
「あ…あ、…」
花道は全身を痙攣させ、暫く放心した様に動けないでいた。
そんな花道の躯を、窓から差し込む月明かりが朧に照らし出す。
其処からひらり、と桜の花弁が舞う様に落ちてくる。
それは、花道の躯にも降る様に舞い落ちる。
月の光に照らし出された花道の肢体は、熱と快楽でほんのり上気して、その肌に桜の花弁が散り落ちる様は、何処か幻想的で、流川は暫しその姿に見入ってしまう。
ごくりと喉を鳴らし、花道に歩み寄り、弛緩した脚を抱えてその奥を曝す。
最奥でひっそりと息衝く蕾に目を留め、其処に顔を寄せて舌を這わす。
「あ…」
突然の刺激に抱えた脚が揺れる。
「よく解してやっから…大人しくしてろ。」
そう告げて、更に舌を其処に潜り込ませた。
「ああ…あ、んあっっ」
花道の、紅く色を増した唇からは絶えず甘く濡れた聲が漏れ続け、下肢の奥には流川の頭が見え隠れしていた。
流川は舌と指で絶えずその蕾を犯し続け、自分を受け入れさせる躯に仕立て上げる。
時折、内に埋めた指を鈎状に曲げ、そうして内側をひたすら擦ると、切羽詰った感の聲が引っ切り無しに漏れる。
その乱れた姿を目にして、甘く掠れた聲を耳にするうち、流川も堪えきれない程に昂ぶってきているのを感じていた。
「ルカぁ、も、うやっっ…」
花道の目尻には薄らと涙が滲み、そんな顔で強請られたら、流川とてこれ以上は己が保たない。
いや、いつだって、花道の存在全てが、自分にはこの上ない媚薬となるのだから。
「オレもガマンできねー…」
花道の脚を更に高く抱え、その入り口に、己の昂ぶった熱を押し当てる。
「力…抜け。」
言い放つと、そのままゆっくりと己を進めていった。
「ああ…」
花道の吐息が期待に甘く掠れる。
流川は花道の腰を掴み、一息に己を花道の内に納めた。
「あああっっ…」
衝撃に花道の背が撓る。
花道が落ち着くまで、流川はそのまま動かずにいた。
「…ツレーか?」
「い、や、ヘーキだ」
流川に笑顔で応える花道がやけに可愛く感じられて、体を倒してその唇にキスを贈る。
花道も流川の首に腕を廻してそれに応えた。
深く舌を絡め、それと共に下肢も合わせるかの様に動かし、奥を探り、花道の悦い処を的確に突いてくる。
「ん、あっ、あ、あ、ああっっ」
堪えきれず花道が口付けを解き、感じ入った高い聲を上げ、腰を揺らめかす。
「ルカ、ルカワぁっっ」
「桜木…」
既に流川に余裕はない。
腰を回しながら激しく打ちつけ、解放を早める。そして、その刻が訪れた。
花道の内の前立腺を一際強く突き、先に絶頂を促す。
「ひあ!あっ、ああああーーっっ……」
高い聲と共に、頂点に達した花道の内が一際強く流川を締め付け、そのきつい圧迫に堪え切れず、流川が花道の内に熱い精を叩き付ける様に迸らせる。
脱力感が収まると、流川は未だひくひくと震えている花道の躯をそ、と抱き締めた。
「どあほう…スゲーよかった。けどまだ足んねー。オメーんち行っていい?」
「んだよ…まだヤんのかよ…明日も練習あんだぞ。節操ナシギツネめ…」
「しょーがねえ。オレはいっつもオメーが欲しくてたまんねーから。特に今夜は…月と桜オメーがあんまキレーで
オカシクなっちまったのかも知んねー。」
「んだよそりゃ。キツネが化かされたってか?」
そうして振り仰ぐ流川は、汗に塗れた肌が降り注ぐ月明かりに照らされて、白い肌が一層白く映えて、綺麗だ、と思った。
「天才でも、キツネに化かされるってあっかも知んねーなあ…」
「んだソレ」
春の宵は短く、だからこそ、其処で見る夢は一層甘美で。
二人は並んで花道のアパートへと帰りを急ぐ。
この上なく甘美な春の宵の夢に、二人で酔いしれる為に。
back