暁の夢




「博雅…よいものをやろう。」

涼しい目元で、晴明が薄く微笑う。
博雅にはもう思考の判別がつかない。
まだ陽も高いうちから、晴明は静かに博雅を犯していった。
着ていた藍色の直衣をはぎ取り、指貫の紐を緩やかに解き、肌を暴いて指や口で触れていった。
首筋に晴明の唇を受け、胸の突起を指で弄られながらも博雅は僅かに抵抗した。

「いやだ…こんな、陽も高いうちか、ら…」

喘ぎながらも、それでも手を伸ばし押し返そうとする。

「案ずるな…決界は張ってある。」

耳たぶを食まれ、胸を女の様に揉まれるともう抗議の言葉は密やかな吐息となってしか出てこない。
そのうちに、晴明の唇が胸の突起へと下りていった。
突起を口に含まれ、軽く歯を立てられる。

「あっ…んっ」

むず痒いような刺激に思わず聲が漏れる。

「ここがよいのか…?」

晴明が薄く笑い、更に舌と歯で執拗に愛撫を施していった。
どうしてこんな事になったのか…
熱に浮かされた頭で、ぼんやりと博雅は思う。
友だと思っていた…
かけがえのない、大切な親友だと…
なのに晴明はそうは見ていなかったのか。
おれに、このような欲望を抱いていたというのか。
それは、一体何時からなのか…
友を、友として見れなくなったのは。
そして、おれは何故受け入れている…?
男から、このような事をされているのに。
屈辱な筈なのに、そうと感じないのは…

「博雅…何を思うている?」

突然、下肢の中心を握り込まれた。

「うあっ…!」

突然の強い刺激に躯がびくんとしなる。

「お前はおれの事だけ思うておればよい…」

そのまま、柔々と中心を揉みしだいていく。

「い、やっあ…ん、あ」

博雅は、ただ翻弄されるしかなかった。
ただ、この手が心地よいと…
自分を離してほしくないと…

段々と、晴明の唇が下に下りていき、下腹部に触れる。
窪んだへその中にも舌を這わせる。

「いやっ…!」

思いがけない所の刺激に身を竦ませた。
晴明は中を探るように執拗に舐め続けた。

「い…や、あっ…んっ」

じれったいような、むず痒いような刺激に博雅の腰が揺れる。

「ふふ…こちらも舐めて欲しいか…」

先程まで手で愛撫していた博雅の中心は、少し勃ち上がり、蜜を零していた。

「いいとも、舐めてやろう…」

見せ付けるように舌を出し、ゆっくりと中心に舌を這わせた。

「いや、あっ…」

そのまま、博雅の中心を舐め上げたり、口に含んで出し入れたりする度、博雅の腰が揺れ、聲が断続的に漏れる。

「ああ…んっ、あっ…」

何故こんなに心地よいと感じてしまうのか…確かに自分は凌辱されているのに。
望んだ行為ではない筈なのに。

「ほれ…また別の事を考えておる。」

晴明が一際強く先端を吸い上げた。

「いやあ!あっ、あああっ!」

強い刺激に耐え切れず、勢い良く晴明の口の中に放射した。
それを、余す所なく全て飲み込んで満足そうに笑う。

「旨かったぞ…さて、おれも楽しませてもらうとするか。」

晴明は、一旦博雅から離れて式神を呼んだ。

「蜜夜…あれを。」
「畏まりました。」

蜜夜と呼ばれた式神が何かを運んできた。
何だろう…と未だ息も整わず、ぼんやりした頭で博雅は考える。
運んできたものは、小さな壺と筆、何か細長い物が入っているらしい木箱だった。

「博雅…後を向け。」

何の事か分からず、言われた通りに膝立ちで晴明に背を向けた。

「そのまま手を前に付いてみよ。」

やはり、言われた通りに従った途端。尻に何かが触れた。

「なっ…!」
「大人しくしていろ。お前を悦くする為だ。」

晴明は、手にした筆に壺の中のものをたっぷり含ませ、それを博雅の尻の奥に塗り付けているのだった。

「い、やっ…!やめろ、せい、めい!」

「案ずるな。じきに悦くなる。これは丁子の実から採った油でな。寺の坊主が使うものよ。…稚児に対してな。」

辺りには嗅いだ事もないような独特の強い芳香が漂う。
その香を嗅ぎ、尻の奥にそれを塗り付けられていると、頭がぼうっとして来て力が入らなくなっていった。
遂に腕から力が抜け、前に突っ伏した体制になる。

「大分濡れてきたな…次は、これだ。」

晴明は木箱の中から錦の袋に入ったものを取り出した。
それを丁子油の壺の中に入れ、たっぷりと油を含ませる。

「博雅…力を抜いておれよ。」

瞬間、博雅の躯に衝撃が走った。

「あああっっ」

先程油を塗り込めた奥の蕾にその手にしたものを突っ込んだのだ。ぐちゅぐちゅという音と共に、それを中まで入れてかき回す。

「い、やあっ!せ、いめい、抜いてくれ…」
「痛くはあるまい?これは柔らかいものだし、油で滑りも良くしたからな。」
「あ、ああっっ…や、あっ…」

濡れた音が響き、蕾をかき回されているうちに、博雅の聲に艶が混じり始めた。
表情も、恍惚としたものに変わっていく。

「ほう。こんなモノでも悦いのか。可愛いな、博雅は…」

その瞬間、唐突にそれを全部引き抜いた。

「ああっ…」

引き抜かれた感触にも身を震わす。

「こんなモノよりもよいものがあるぞ。」

そのまま、晴明は指貫の前を寛げ、既に張り詰めていた自身を取出し博雅の蕾に当てがった。

「やあああっっ」

一息に貫かれ、そのまま前後に揺さ振られる。
そのうちに、晴明が博雅の躯を抱え、座り込んだ。

「あああっ!」

二人は同じ向きに座る形になり、博雅はより深く晴明を呑み込んでしまう。

「博雅…」

晴明が耳元で熱っぽく囁き、胸の突起と博雅の中心を弄りながら激しく揺さ振る。

「やあ!あ、あっああ!」

博雅はもはや嬌声を上げ続けるだけだった。何も考えられない。
ただ、この身に感じる感覚と晴明の体温だけが全てだった。

「博雅…おれのものになれ。魂魄すらも全て…」
「せい、めい…せいめい!」

二人とも限界が近い。

「ひろまさっっ…」
「せ、いめいっ!あ、あああっっ」

二人同時に絶頂を迎え、精を吐き出した。
博雅の意識が遠退いていく。
薄れていく意識の奥で、晴明の聲を聴いた。

「おれの傍にいてくれ…」

ああ、いるとも。
お前が望むなら、ずっと…
そんな答えを、確かに返した気がした。