注:こちらは「フェアトラーク寓話」という漫画のWパロです。名前と設定を借りただけのオリジナル色が強い作品ですが、それでも宜しければどうぞ〜
紅と黒の寓話
ヨーロッパの片田舎。
普通の人間には中々辿り着けない、荘厳な城の奥。
そこの主が寝室で惰眠を貪っていたー・・・
「いい加減起きやがれっクソギツネっっ!!」
罵声と共にシーツに包まった主の体に蹴りが飛び、衝撃でどすん、と派手に音を立ててその体が床に転げ落ちた。
「何人たりとも俺の眠りを妨げるものは・・・」
「まあだ寝惚けてやがんのか!」
今度は主の額に頭突きがかまされ、よろめいた主は流石に覚醒せざるを得なかった。
「いてーぞどあほう・・執事ならもっと優しく起こしやがれ・・・」
「そんなんでてめぇが起きんなら俺だって苦労しねえんだよ。文句があんならてめえの寝汚さをどうにかしやがれ。今夜はてめえで魂の回収に行くっつったんじゃねえのか、ああ?!」
「忘れてた・・・」
花道はがっくりと項垂れた。
そうなのだ。一事が万事、自分の主はこんな調子なのだ。
流石にもう慣れたつもりだったが、やっぱり時たま脱力してしまう。
これで魔界の実力者で侯爵の位を持つっつーんだから・・・
そう。自分の主は第一級支配階級の魔界貴族、ヴァラファール侯爵。
ちなみに人間界に居る時は「流川楓」と名乗っている。
名を不用意に知られる事のない様に、との事だが・・単に面倒くさいのかもしれない。
そして、その流川に仕えている・・筈の桜木花道も、人間ではない。しかし僅かに人の血は混じっている。
子供の頃、流川に拾われ、以来、彼に仕える執事としてこの城に居る。
花道は見事に鮮やかな赤毛と琥珀の瞳を持ち、これが、漆黒の髪と瞳の流川と並ぶと、その鮮やかな対照は見事である。
流川と花道は互いに対して全く遠慮がない。
立場としては、花道は流川の召使である筈なのだが、流川は大抵の事に鷹揚・・というか、無頓着だった。
自分の執事がどんな暴言を吐き、力に訴えてきた所で、それを糺そうとはしない。
場合に寄っては、いや、ほぼ毎回対等に応酬している。
流川の魔力を以てすれば、花道を捩じ伏せる位、容易い。が、それをしない。
魔力で自分の言いなりになる花道など面白くもない・・という事らしい。この辺りが「変わり者」呼ばわりされる所以だ。
流川は徐に手を伸ばし、花道の腕を捕らえてぐい、と引き寄せた。
「うわっ?」
不意を付かれて、花道はそのまま流川の上に倒れこんでしまう。そこは天蓋付のベッドの上だ。
咄嗟に流川は体を反転させて花道との位置を入れ替えてその上に伸し掛かる。
先程まで涎を垂らして寝くたれていたとは思えない程の敏捷さだ。
「今夜は出掛けねえ・・もっかい寝る・・・」
「てめえ、その寝汚さどうにかしろよな!起こした俺の立場がねえじゃねえかっっ」
「どあほう・・スルぞ・・」
「なにいっ?!てめえ、昨夜も散々・・・」
「オマエ相手だといくらヤッても飽きねえ。いつでも勃てる」
「ざけんなこのエロギツネ・・・」
「うるせえ口だな。塞ぐぞ」
言い様、流川はそれを実行した。
花道の柔らかそうな唇に己のそれを押し付け、強引に口内に割って入った。
「ん、んむっ・・・」
強く舌を絡められ、唇を舐め回され、そこから生まれる、ぞくりとした快感に花道はただ、翻弄されるままだった。
「どあほう・・・」
耳元で囁く流川の声に、また背筋をぶるりと震わせた。
「あ、ああ・・んんっっ」
寝室に甘ったるい喘ぎ声が続けざまに漏れる。
花道は四つん這いの獣の体位で、後ろに流川の逞しいものを受け入れていた。
流川が動く度、蕾からぐちゅぐちゅと粘質の水音が漏れ、それが二人を一層興奮させる。
時折、流川のしなやかな指が胸の双果をくりくりと刺激するのも堪らない。
「ああ・・る、かわ・・・もう、やっ・・・」
「・・もう我慢できねーか」
そう言う流川自身も既に限界が近付いている。
たらたらと白濁を零し続ける花道の陰茎に手を添え、腰の動きと共にそれを扱く。
「やあ!あ、あ、あああっっ」
「さ、くらぎっ・・・!」
強く激しい突き上げを何度か繰り返すと、腕の中の躯がぶるり、と震えた。
「ああーーーっっ・・・」
事の後、花道は流川の腕の中で悪態を吐いていた。
「ったく信じらんねーよな、このエロギツネ。どんだけヤりゃあ気が済むんだよっっ」
「テメーだって悦んでた・・・」
「なにおうっ」
「どあほう。嫌だったら死に物狂いで拒んでた筈だ。オメーも俺とスんの嫌じゃねえんだろうが。」
「ふぬーーっっもう黙れ!俺は寝る!」
言い様、花道は瞬く間に人から猫の姿へと変化を遂げていた。
人間の姿が本性ではあるが、猫の姿にも変化する事も出来る。
それは、紅玉の瞳の、ビロードのような毛並みを持った、綺麗な黒猫だった。
くわあ、と欠伸をして、流川の腕の中で丸くなる。
その毛並みを愛しげに撫でて、流川も直に目を閉じた。
end