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『視線の意味』
眼は潤みを帯び、快楽と少しの怯えが支配していた。 「あ、っんん…、あ…」 自らの下で熱い吐息と切ない喘ぎ声を上げるのは愛しいその人…。 「博雅」 愛しい、愛しき人…。 彼の人は源博雅。 陰陽師安倍晴明の想い人。 「んっ、あ…、もっ、…っ、め、い」 ゆるゆると首を振った博雅の視線は熱く、晴明の心を射抜き、一方で心を乱す…。 透明な雫を流す眼元にそっと口付けをすれば、恥ずかしそうに、同時に嬉しそうに小さく微笑んだ。 「本当にお前は…」 これ以上俺の心を掻き乱してどうするのだ その時の笑みはゾクリとするような、それでいて、優しいような、そんな笑みだった…。 博雅の自分を見る眼が変わったのはいつのことだっただろうかと考える。 友として、ずっと接してきたつもりだった。 内なるものを隠して、博雅が安心するよう、友として…。 隠していたにしろ、やはり愛しいものは愛しくて、ただただ隣にいられるだけで嬉しかった。 そんな中で変わってきた、博雅の晴明に対する視線の意味。 きっと、晴明はその意味に気づいていたのだろうが、博雅はもちろん気づいていなかっただろう。 そう、途中までは…。 ある時、ふと視線が合えば、博雅は一瞬戸惑って、そのあとに小さく笑った。 そして、晴明はそれがまた愛しくて、他のものには見せないような、ふわりと微笑んだ。 その瞬間、晴明は博雅の心の内に生まれたものを悟った…。 本当は、求めるのが怖くて、拒絶されるのが怖くて… ただ隣にいられることさえ贅沢なことで、それ以上の、友以上の関係を望むつもりなどなかった 自分の想いを告げる気もさらさらない そんなことをすれば博雅が戸惑うだけだから この関係を壊すだけだから それならば、自分の中だけでとどめればいい そう思っていたはずなのに…。 片想いで終わるはずだったものが、博雅を望むようになったのは、博雅の視線の意味を理解して、その意味を博雅自身が気づいてしまったその時から…。 空は秋晴れ。清々しいような陽気。 晴明は何をするでもなく、縁の柱を背に立てた右足に手を乗せ、微かに冬の気配を感じるようになった庭を見つめていた。 「晴明様、今しばらく致しましたら博雅様がお見えになります」 どこからか蝶が飛んできたかと思うと、不意に人の姿に変化し、そう告げた。 「そうか。蜜虫、酒の用意を」 「はい」 蜜虫、晴明の式神。 彼女は静かに一礼すると、再び姿を消した。 「今日は珍しく何も呟かなかったな」 晴明も博雅の訪れには気づいていた。 しかし、今日はいつものような訪問の呟きがなかった。 普段なら一条戻り橋の上で無意識であるにしろ何かしらをポツリと呟いて、存在を晴明に知らせるのに、それが今日はなかった。 そして晴明は、しばし博雅の到着を待った。 「晴明、来たぞ」 弾んだ声を出してやってきた博雅は晴明の姿を確認するとパッと表情を輝かせた。 「ああ」 だが、晴明がそれだけで答えると、 「ん?なんだ、晴明は俺が来たのが嬉しくないのか?」 隣に座した博雅は不満げな声を上げた。 頬を膨らませたその姿は少し幼げで、大の大人がするような仕草ではないにしても博雅がすると可愛く見えてしまうのが不思議である。 とにかく、晴明から見れば可愛いものは可愛いし、愛しい。 「そんなことないさ」 「…そうは見えん」 まだ不満そうにする博雅にクスリと笑って晴明は、 「拗ねるでないよ、博雅」 「むむ…、拗ねてなどおらん!」 博雅はむきになって言う。 むきになればなるほど、焦れば焦るほど、そのことを実証しているのだと言うことを博雅は知らないのではないだろうか、と時々思うことがあるが、博雅は博雅で本当に必死らしい。 「ふふ…、そうむきになるな。博雅、お前が来てくれて嬉しいよ」 そんな博雅に微笑んで言えばたった今まで眉間によっていたシワは素早く消え去り、瞳には嬉しそうに光が灯った。 「そ、そうか?ならば、最初からそう言えばいいものを」 「言ったら言ったでお前はきっと“お前、晴明ではないな”などと言うのだろう?」 「うっ、そんな、ことはない!!」 顔を赤くした博雅が声を上げた時…、 「そんなことはない」 後ろから繰り返す声が聞こえた。 「蜜虫〜!!」 バッと振り返ったそこには膳を持った蜜虫の姿。 博雅に向かって小さく微笑むと晴明に向き直った。 「晴明様、酒と肴を」 「ああ」 晴明と博雅の間に置かれた膳の上には酒瓶と焼いた茸。 「ほう、茸か!!」 そして博雅はそれらを見た瞬間に嬉しそうに眼を輝かせた。 瞬きの間に、パタパタと揺れる犬の尾が見えそうな…、喜び駆け寄る犬のような、そんな…。 「先日ある事情でいただいてな、うまかったからお前に食べさせようと思ってな」 「そうか!すまないな!!いやー、茸かー、うまそうだなー」 早く食べたいと素直に言えばいいものを… 今にも涎を垂らしそうに茸を見つめる博雅は晴明がクスリと笑ったことに気づいてはいないだろう。 「博雅、食べてもいいんだぞ。お前のために焼かせたのだからな」 「お、おう!では…」 嬉しそうに頷いた博雅はつまんだ茸を口へと放り込んだ。 むぐむぐと噛む様を隣で見つめる晴明の口元には笑みが浮かび、その後の言葉を待つ。 それを飲み込んだあと博雅は、ほう、と一息ついてから、キラキラと輝く瞳を晴明に向け、 「うまい!」 その一言を言った。だが、博雅の想いが十分に込められた一言だった。 「そうか、それは良かった。ほら、酒は飲まぬのか?」 「おう、もらおうか!!」 酒の文字にまた眼を光らせた博雅が酒の入った瓶を手に取ろうとしたが晴明がそれを制した。 「俺が注いでやろう」 「そ、そうか?」 「杯を持て」 「うむ!!」 晴明の言葉に素早く反応した博雅は杯を持ち、ばっと差し出した。 少しだけ白い液体を注いでやればさらに嬉しそうに博雅は笑った。 その表情がなぜか眩しく見えて、晴明は眼を細めた。 同時にその表情が愛しくて、眼を細めて口元を緩めた。 「すまぬな。では俺も…」 そう言って博雅も晴明の杯に液体を注ぐ。 「では」 「ああ」 言葉を掛け合って、同じように液体を飲み干す。 液体が喉をとおり、全身に伝わっていく。少しずつ、少しずつ、体が温かくなっていった。 「んー、これもうまいなー!!」 「これも先日いただいてな、酒好きのお前のためにとっておいたのさ」 「むむ!嬉しいことを言ってくれるではないか!」 今度は間に座った蜜虫が、空になった博雅の杯に液体を注いだ。そして、次に晴明の杯…。 その間にも、博雅はコクコクと酒を喉にとおしていった。 「博雅、あまり急ぎすぎるなよ、すぐに酔うぞ」 クスリ、クスリと言えば博雅は頬を赤くして、だ、大丈夫だ!、とコトリと杯を置いて、頬を膨らませたまま、空いた手で茸をつまみ、再び口に放り込む。 「ははは、そう拗ねるな、博雅」 「…だから、拗ねてなどおらんわ」 晴明を恨めしそうに見つめてプイッと荒れ野のような庭に眼をやった博雅は、あ、と声を上げる。 「なあ、晴明、やっと秋になったと思ったら冬はもうすぐそこまで来ているのだな」 何を突然言い出すのやら、と博雅は急にしみじみと言った。 一人でうんうんと頷く博雅に晴明は小さく笑って、紅い唇で酒を飲む。 「ああ、そうだな。季節の移り変わりとは知らず知らずのうちに訪れるものさ」 「うむ…」 急に静かになった博雅が晴明に視線を戻した。 それからしばらく、晴明と博雅、それに蜜虫を交え、秋の宴を楽しんだ…。 晴明の屋敷を訪れてから博雅はずっと上機嫌で、その笑顔が晴明の心を和ませた。 それはいつものことなのだが、今日はなぜかどこかいつもとは違うような気がした晴明は博雅に問うてみる。 「ところで博雅、今日はどうしたのだ?」 「ん?なにがだ?」 きょとんとした表情の博雅は晴明に問い返す。 きっと、本当に晴明の言葉の意味を理解していない…。 そんなことすら、晴明にとっては愛しくて…。 「今日は何やら上機嫌だな。何かあったのか?」 「…いや、何もないのだよ。ただ、な…」 「ただ?」 博雅の瞳が、じっと晴明を見つめていた。 戸惑うような、伺うような…、それでいてどこか嬉しそうな、そんな瞳。 この瞳が俺を移すようになったのは、あの時か… 最初は、恐ろしいものを見るような眼で見られたのを今でも覚えていた。むしろそれが正常な反応かもしれない。 殿上人の間では晴明に対するいい噂など皆無に等しいだろうから。 話すようになって、一緒に過ごすようになって、友となって…、晴明の想いが変わるのは早かった。 ただ、博雅の中に晴明と同じ感情が生まれるなど、微塵も思っていなかった、それだけははっきりと言えることだろう。 続きを促す晴明に博雅は一瞬考えて、続きを口にした。 「実はな、急に…、急に晴明に会いたくなったのだよ」 「ほう」 「無性に晴明の顔が見たくなって…」 「それで、共の者も従えずに来た、というわけか」 まあ、友を連れないのはいつものことなのだけど…。 「そ、それは余計だぞ、晴明!!」 案の定顔を赤くした博雅は否定したが否定し切れていない。何しろいつものことなのだから。 「…それに、な…。本当は急にきてしまったから晴明はいないかもしれないと思っていたのだよ。しかし晴明はいた。それが嬉しかったのだ」 「…」 「本当に嬉しかったのだ。顔が見れて、声が聞けて…」 ふわりと微笑んで言う博雅に、晴明からは小さなため息がもれた。 「晴明?」 本当にお前と言うやつは… 「嬉しいことを言ってくれるではないか、博雅」 晴明自身、気づいてはいないだろうが、その口元には笑みが浮かんでいた。優しげな、笑みが…。 「…晴明」 博雅の顔が再び朱に染まる。 じっと晴明を見つめた瞳には恥ずかしそうな光。 「蜜虫、これを下げてくれるか」 二人の間でにこやかに座っていた蜜虫に声をかけると、はい、と小さく返事をしてすべてを膳に乗せ、下がっていった。 「?晴明、もう終わりか?」 「なんでも八部までがいいというではないか」 「う、うむ…」 それにしても…、上機嫌なのはいいことだが今日の博雅もまた素直ではないな… 今もなにやらもぞもぞと動いて落ち着かない雰囲気だった。 しかし、博雅の考えていることなど晴明にはお見通しなのだろう。 だが、今はまだあえて様子を窺っていた。 が、いつまで経っても言う気配はない。 「博雅」 逆に名前を呼んだだけで、ビクンと身体を弾ませた。 「ど、どうした?」 「それはこっちの台詞だ。どうしたのだ、落ち着かない」 「っ」 一瞬強張った表情がすぐに見えなくなってしまったのは博雅が顔を俯かせてしまったから…。 晴明は博雅が何を考えてるのか大体わかる。でも、それを口にしないのは、やっぱり本人の口から何を考えているのかを知りたいからだ。 愛しい、愛しいその人が何を考えているのか、何を想うのか、晴明の知りたいのはそれだけだろう。 黙りこんだ晴明に博雅は徐々に顔を上げた。上目使いに、そっと、そっと…。 「…晴明」 「ああ」 「晴明?」 「博雅」 「せーめい?」 「博雅」 こんなやり取りですら、愛しくて…。 晴明はクスリと笑ってしまう。 「…なぜ笑う?」 小さくむくれて、言う博雅はさらに可愛くて…。 「お前が可愛いのがいけない」 「っ、な、なんだそれは!」 「ははは、まあ、そういうことだ。ところで博雅、俺に何か言いたいことがあるのだろう?」 驚く博雅を眼を細めて見つめる晴明。 「…」 「なあ、博雅、ここに来て最初言ったよな、“お前は俺が来て嬉しくないのか”と、そんなわけないだろう。俺はお前がここに来てくれるのが一番嬉しいのだ。博雅が傍にいるのが一番落ち着くのだよ」 優しい声、柔らかい表情…、それはきっと、博雅の前でしか見せないもの…。 俺が大切なのはお前だけなのだ 博雅だけなのだよ、俺に愛しいと思わせる者は… 「…晴明こそ、嬉しいことを…」 小さな声で博雅は言った。瞬間晴明の心に広がる想い…。 だが二人の間には、膳が置いてあっただけの距離…。 その距離がなぜか遠く感じるのは晴明だけであろうか…。 「博雅、手を…」 どうしても、温もりが傍にほしかったのかもしれない…。 「ん?」 博雅は首を傾げながらも晴明の伸ばされた手に手を重ねてくる。 暖かい、博雅の手…。ここにいるのだと、実感できた。 博雅の視線が戸惑っていることには気づいたが、気づかないふりをした。 それは、その中にあるもう一つの想いを引き出したかったから…。 どちらにしても、博雅の視線は晴明を釘付けにして、心までも捉まえて、放さない。 冷たい風の吹く心に温かさをもたらしたのはあの時、この、源博雅によって…。 「…せ、晴明、あの、な…」 重ねられた手を強く握ると、戸惑う博雅が言葉を紡ぐ。 「どうした」 「その、な、その…、傍に、いってもいいか?」 晴明が博雅の申し出を断るはずがなかった。 紡がれた言葉に晴明が頷くと、恥ずかしそうに小さく笑って博雅はそろそろと近寄ってくる。 でも、手は決して放さなかった。 晴明も、博雅も…。 ぴたりとくっつくほどの距離に来た博雅は寄りかかるように晴明の隣に腰を下ろし、つながれていた手を胡坐をかいた晴明の膝の上に置いた。 「ずっとな、晴明の傍に来たかったのだよ」 ああ、そうか、と…、晴明は笑みを浮かべた。 距離を感じていたのは俺だけではない、博雅もか… 時には晴明にもわからないことはあるようで、たまにはそれもいいな、と晴明は笑う。 「やっぱりお前は、好い漢だよ」 言って、晴明は静かに博雅に口付けをした。 寝所に行ったのは、晴明に導かれてだった。 つないだ手を放さないまま、そのまま連れ立った。 静かに博雅を寝かせた晴明は、その上に覆いかぶさる。 博雅は緊張した面持ちで身を硬くして、晴明に身を任せた…。 「んんっ、あ、っあ…」 潤んだ瞳が、晴明を見つめていた。 「博雅、そんな眼で俺を見るな、止まらなくなるぞ」 もうすでに抑制など効かなくなっているのかもしれない。 それだけ、博雅の視線は熱く、晴明を見つめて…。 身体は柔らかくしなり、あらわになる喉元…、薄く開いた唇からもれる吐息と喘ぎ声…。 胸の飾りは硬くとがり、口に含めば博雅は嬌声を上げた。 「ぁ、や、っん…」 「いいのか、博雅」 耳の傍に近づけた唇で囁けば、身体をビクンと弾ませ、戸惑いながらも頷く。 「せ…、め」 「ああ、どうした」 優しく問い返すと、今度はフルフルと首を横に振った。 熱い眼差しが、変わらず晴明に向けられていたが、そこには少し甘えるような色…。 これも、無意識なのだろうな ふふ、と妖しく笑った晴明は雫を流す博雅の中心に手を触れた。 「あっ」 「お前のここは熱いぞ、今にも弾けそうだ」 緩く手を動かすと博雅は背をのけぞらせた。 まるで誘うように、あらわになった喉元に、晴明は誘われるがままに口付けをした。 「ん…、せ、めぃ…」 強く吸って、鎖骨の辺りに赤い華を咲かせた。 俺はここにいる そう、印でもつけるかのように…。 「な、せい、め…」 すると、博雅が晴明の耳元に口を寄せ、熱い息をかけながらその名を呼んだ。 「なんだ」 「おれ、も…」 そこまで言って、戸惑う黙ってしまう。 すぐに、自分が何を言ったのかを考え直し、急に恥ずかしくなったのか博雅は晴明の首に手を回ししがみついた。 「ぁ、ん、んんっ、あ、ぁ」 その間も晴明は博雅を攻めるのをやめはしなかったのだが…、博雅が何を言おうとしていたのかは、見当がついていた。 「お前も、つけるか?」 博雅の鎖骨についた紅い華…。 「っ…、ど、して?ぁっ…」 どうしてわかったのか、そんなのは晴明にとっては簡単なことだった。 他ならぬ博雅のことだからな… 博雅の言いかけたこと、それはきっと、俺もお前に印を…というところだろう。 隠し事の下手な博雅だから、瞳を見れば想像がつく。本人でさえわからない変化も、晴明なら見抜くだろう…。 少しだけ腕の力を緩めた博雅が、揺さぶられ、喘ぎながらも必死に晴明の顔を覗き込んでいた。 「博雅が愛しいからな」 優しい響きで言えば博雅は顔を赤くして、それでも恥ずかしそうに笑って、 「…んっ、ば、か…」 そう口にした。 本当に、可愛い漢だよ・・・ 「お前が思うようにつければいいさ」 言ってやれば最初戸惑った博雅ではあったがおずおずと晴明の首の付け根辺りに唇を当てた。 「ん…」 「博雅、俺はお前のものだからな、いくらでもつければいい」 その声は、博雅の耳には届かないほどの小さな声。晴明の独り言にも近いような言葉。 自分では見れないのはおしいことだがな 晴明は心の中で呟いてクスリと笑った。 そして、博雅の唇が離れたと同時に激しく動き出す…。 「ひ、ぁ、んっ…、やぁぁ」 「いやでは、ないだろう、博雅」 博雅も限界に近づいていた…、しかし、それは晴明も同じことで、余裕を見せていてもやはり余裕はないようで…。 「いってもよいのだぞ、夜は長い。今宵は朝まで放さぬからな…」 甘い声で囁いたのは博雅の耳元。 晴明の囁きに導かれた博雅の身体はさらに敏感になり晴明を受け入れた。 「あ、あ、んんっ、も、や、せ…、めぇ」 愛しい… こんなに愛しく思うようになったのはいつのことか。 「博雅、ともに…」 言うと、博雅はコクコクと何度も頷いた。 愛しき、愛しき存在… その眼差しの意味が変わったのは、いつのことだったか。 「あ、やぁっ、あぁぁあっ」 「んっ…」 そして、二人は同時に精を放った。 熱く、弾む息の中、 「博雅」 名を呼ぶと、博雅は嬉しそうに微笑んだのだった。 あれから、何度行為を繰り返したのか…、博雅は晴明の腕の中で寝息を立てていた。 「…」 また、無茶をさせてしまったか 今は静かに眠らせてやりたかった。 無理をさせてしまったのは自分。抑えをなくしたのも自分。 しかし、なくさせたのは、確実に博雅だ。 たとえそれが無自覚なのであろうと…。 「ん…」 もぞもぞと動く博雅はまだ眼を覚ましてはいない。 「せ…、め…」 名を呼ぶ声は、まだ夢の中にいるのであろう。 摺り寄せてくる身体を抱きなおし、晴明は耳元で一言だけ囁いた。 「博雅」 と…。 晴明の腕の中、眠る博雅は嬉しそうに微笑んだ…。 どんな時でも、名を呼べば嬉しそうに笑う博雅、晴明はそんな博雅が愛しくて、本当ならその笑みは一人のものであってほしいと心のどこかで思っていた。 けれど、それは決して口にすることはないだろう…。 自然であるからこそ、博雅は博雅なのだから…。 博雅は晴明の眼に惹かれ、魅了され…、その恐ろしいまでの視線に心を射抜かれて。 同時に、 晴明は博雅の眼に惹かれ、魅了され…、導かれ、ある時は惑わされ…。 眼差しの強い二人だからこそ、いつしか惹かれ合い、そして、今日も博雅と晴明の視線が、絡み合う…。 |
「華音」のいちい暁耶様からフリーSSを頂きました。
甘い〜可愛い〜奪ってよかった・・・(壊)